羅網事故原因の3タイプ

羅網事故の発生状況の個別・詳細な分析とシミュレーション等による確認により、羅網事故における防鳥ネットの関与状況が見えてきました。 これまで野鳥の羅網報告で使われてきた「網にかかる」「ネットに絡まる」「翼や脚を引っ掛ける」といった表現は、羅網事故の実態を的確に示すものでは無いと考えます。

当プロジェクトでは、羅網事故における防鳥ネットの関与状況という観点から、羅網事故を3つのタイプに類型化しました。

羅網事故は、羅網場所(もしくは網のタイプ)との強い関連性が認められるため、羅網場所別に3つの羅網類型を図示します。

羅網場所別の羅網類型

Type 1. 「絡まり型」羅網

鳥の体が防鳥ネットに接触して飛翔・運動制御能力を失い、網から抜け出せなくなるタイプの羅網事故を「絡まり型」羅網と定義します。

「絡まり型」羅網が発生する場所は、カスミ網と同様に網地の張力が著しく低く、網地に接触した鳥が足や翼で網地を強く押しても、抜け出すことができません。 鳥の体は網糸が絡みついた状態となります。

一般に「羅網」という言葉から想定される羅網事故は、「絡まり型」羅網に当たるでしょう。

現在、ハス田で発生している「絡まり型」羅網は、羅網事故全体の15%程度です。

絡まり型羅網の例(天井網の端)※2)

絡まり型羅網は、以下のような場所で発生します。

  • 直置き網・被せ網(簡易的な支柱や誘導紐に網を被せたものを含む)
  • 天井網の端で、誘導紐等がカスミ網の棚糸のように機能し、網地が弛んだ場所
  • サイドネットを巻き上げたり、たくし上げた箇所

Type 2. 「挟まり型」羅網

鳥の体の一部が網糸に強く挟み込まれた状態となる羅網事故を「挟まり型」羅網と定義します。

「挟まり型」羅網は、網地に概ね適切な張力が保持されている場所で発生します。 網糸に挟み込まれ捕捉されるのは鳥の体の一部のみで、張力が著しく低い網地に鳥体が捕捉される「絡まり型」と区別できます。

現在、ハス田で発生している羅網事故全体の80%以上、天井網羅網の殆どが「挟まり型」羅網です。

挟まり型羅網の例

「挟まり型」羅網は、野鳥の体の大きさや体形と、防鳥ネットの網目および網糸の特性に起因すると考えられます。

漁網を転用した防鳥ネット(菱目有結節網)は、縮結(いせ)※1)を利用して展張し、網目が柔軟に変形するので、「挟み込み」が発生しやすい性質を持ちます。鳥は足・脚部や翼、首・頸部が突き出ており、これらの部分が網目・網糸に挟み込まれて「挟まり型」羅網が発生するのです。

Type 3. 「はまり型」羅網

鳥の体の一部が網目にはまり込み、身動きができなくなるタイプの羅網事故を「はまり型」羅網と定義します。

「はまり型」羅網は、鳥の体形と密接な関係があります。サギ類のような足が長い鳥は、防鳥ネットの網目を踏み外して足を差し入れてしまうと、抜き出すことができず身動きが取れなくなってしまいます。

はまり型羅網の例(天井網の端)※2)

「はまり型」羅網は主に天井網の上で発生しますが、発生件数は少なく、羅網事故全体の5%未満です。

1)網地を広げるために網地の長さ(引き延ばして網目が広がらないようにした長さ)を縁綱などの取り付け部分の長さに縮める割合(漁具用語)

2)羅網例の写真は少々刺激的な内容となるため、彩度・画質を落として掲載しています。